カテゴリー「酒の世界」の記事

2014年3月17日 (月)

日本酒を美味しく飲んでいただくには?

先日、東京に行った時に、
東京駅周辺を少し見て回った。

駅周辺にある飲食店と言えば、
調理スペースの関係で、
ファストフード店ばかりかと思っていたら、
ある一角には、
名の売れた料理店が並んで出店している。
まだ、5時を少し過ぎたところなのに、
すでに、外で待っている人たちのいる店もあり、
人気のほどがうかがえる。
けっして安い店ではないが、
駅の近くで、
気軽に老舗の味が楽しめるようになっているのだね。

せっかくだから、
丸ビルの中にある、
かねてから名前を聞いていた、
和食ダイニングに入ってみた。

なるほど、店の中央に大きなカウンター席があり、
周りにテーブル席。
落ち着いた感じの造りだ。
全体に照明を落としてあるのは、
大きな窓から見える、
丸の内の夜景を取り込むためなのだろう。

あいにくと、
窓際の席は予約で一杯だったが、
広めのテーブル席で、
都会のひと時を楽しんできた。

料理は、思ったより素朴な内容のものだったが、
それなりの工夫のされたものだった。
都会の人には、かえって、
この素朴さが受けるのも知れない。

さて、メニューには、たくさんの日本酒もあったのだが、
今の季節に出回る、
ある銘柄の純米吟醸生酒を注文した。

私は、お酒は苦手なのだ。
でも、商売の勉強のためには、
我慢して、飲んでみなくてはならない。

黒いベストのお兄ちゃんが持ってきたのは、
先ず、三寸ほどの丸い皿。
そこに、ミニタンブラーを置く。
そう、一口ビールグラスとか呼ばれている、
あのグラスだ。
そこに一升瓶から、
トクトクとお酒を注いでくれる。
グラスがいっぱいになっても、
まだ注いでいる。

下の丸い皿に、
グラスから溢れた酒がいっぱいになって、
一升瓶の口が持ち上げられる。

あ〜あ、
とがっかり。
その注ぎ方を見てね。

せっかく、丸の内のおしゃれな雰囲気で酒を楽しもうというのに、
皿にまでその注がれた、そのお酒の周辺は、
新橋のガード下か、新宿の西口の、
大衆的な酒場のざわめきの中にあるようだ。

頼んだお酒は、
けっして安いものではない。
杜氏さんが、一生懸命作ったお酒だ。
この注ぎ方で、
その酒の持つ、
深い香りや味を楽しめるのだろうか、、、、
、、と、酒の苦手な私は思ってしまうのだ。

日本酒を大切にする店であれば、
持ち上げたグラスの底から、
皿に溢れた酒がポタポタと落ちるような、
こんな出し方はしないだろうなあ。

こんなお酒の出し方ひとつでも、
店の姿勢が見えてくる。
私も、酒を売っている身なので、
そこのところが怖いところだ。

あるそば屋さんは、
吟醸酒を頼むと、
備前焼の、口の小さな徳利で出してくれる。
焼き締めの肌が、酒の冷たさを感じさせるし、
口の小さな徳利は、
ぐい飲みに酒を注ぐまで、
その芳醇な香りを閉じ込めておいてくれる。
あっ、この店は、
お酒を大切にしている店なのだな、、、
、、と、酒の苦手な私でも思うのだ。

そんな酒の扱い方を、
私も、もっと学ばないといけない。
だから、苦手のお酒だけれど、
我慢して、いろいろな店で飲んでみよう。

ちなみに「かんだた」では、
グラスに酒は溢れさせていない。
まあ、お好みかもしれないけれど。
佐久の酒、亀の海「春うらら」
純米吟醸うすにごり生です。

Haruurara

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2013年2月26日 (火)

「特別純米酒」をお燗で飲む。

長野は、昨日今日と朝は猛烈に冷え込んだ。
昨日はマイナス9度、
今朝もマイナス8度まで下がったようだ。

このような寒い時に飲むお酒といえば、
やはり、日本酒を燗で召し上がる方が多い。

「かんだた」でお出ししている燗酒は、
地元長野の小さな酒蔵の銘柄、
「信濃光(しなのひかり)」を使っている。

Sake1
この酒は「特別純米」という種類だ。

「純米酒」とは、
米、米こうじ、そして、水だけで作られた酒のこと。
普通の酒のように「醸造用アルコール」を加えていない酒のことだ。
精米歩合が70パーセント以下で、
香りや色が良好なことが「純米酒」と呼ばれる条件の中に入っている。

その中でも「特別純米」とは、
精米歩合60パーセント以下の米を使い、
製造上特別な工夫がされたものに付けられる名称。

ほら、ラベルの表示はこうなる。

Sake2

うん、なんだか難しいけれど、
とにかく特別な手間をかけて作られたらしい。
普通であれば、このクラスの酒は、
冷やして飲まれることが多い。
逆に温めると、香りのバランスが壊れてしまう酒もあるからだ。

ところがどっこい、
この「信濃光 特別純米」はたくましい。
冷やしたり、冷や(常温のこと)で飲んでも、
まあ、それなりのお酒だけれど、
温めると独特の豊かな香りが広がる。
それもそのはず、
この酒は「花酵母」といわれる、
花から取り出した酵母が使われているらしい。

そんな香りのよさが気に入って、
お燗用にはこの酒を使っている。
ちょうど一合(きちんと180mlのこと)入る徳利で650円。
そばには、やっぱり、日本酒が合うなあ、、
と、酒に弱い?私は思っている。

ところで、
いろいろな銘柄の「純米酒」を、
仕事のために、嫌々ながら味見をしているのだが、
中には、「これで純米?」と首をかしげたくなる酒もある。
そうかといえば、
味見だけでは物足りなくなる酒もある。
「純米酒」は他のものを添加して調整できないので、
酒蔵としては、造りも管理も難しい酒なのだそうだ。

そこで少量の「醸造用アルコール」を加えると、
品質が安定するのだが、
そうすると、「純米酒」とは呼べなくなる。

ところが、先日、
関西のある酒蔵が、
「醸造用アルコール」の入った「純米酒」を販売したとして摘発された。
なんと、
国税局の中に、
ちゃんと酒を調べる部門があって、
成分を分析して明らかになったのだそうだ。

安心して「純米酒」というラベルの酒を飲めるために、
そういう管理も必要なのだ。
というより、
製造、販売する人に、
それなりの倫理観が求められているのだろう。

それにひきかえ、
そば屋の世界は、、、、、
なんて話は、
せっかくの燗酒がまずくなるのでやめておこう。

 

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2012年5月14日 (月)

酒のあとの蕎麦?蕎麦の前の酒!

五月も半ばになるというのに、
長野ではここのところ、
ストーブを点けずにいられないような、寒い日が続いた。
その寒さも遠のき、
これからは初夏の爽やかな日々となるようだ。

ちょっと、俳句を紹介しよう。

酒のあと蕎麦の冷たき卯月かな

                野村 喜舟

卯月(うづき)とは陰暦の4月のこと。
ちょうど今ごろの季節を指すようだ。
この頃は、まだ、蕎麦を洗う水もまだ冷たい。
酒を飲んで、ほんのりほてった身体に、
程よく冷えた蕎麦が、気持よく喉を通るのだ、、ろう。

ここでいう酒とは、もちろん、日本酒のことだろう。
蕎麦には、やっぱり日本酒が合うようだ。

ところが、その酒が売れなくなっている。
そう、日本酒離れが叫ばれて久しい。
日本酒を蕎麦とともに飲んでいただきたいと思っている、
そば屋としては、残念な傾向だ。

若い人には、日本酒は飲みづらいものになっているようだ。
先日も、ある宴会の飲み放題で出された酒は、
あまりお勧めできないレベルのもの。
こういうのを日本酒だと思われてしまっては、
確かに敬遠されてしまうだろう。

最近はスーパーでも酒が売られていて、
日本酒もあるが、う〜ん、こういう酒ではねえ。
いや、もちろん、そういう手に入りやすい、
気楽な酒も必要。
しかし、日本酒の世界は、
もっと、奥の深いもの。
スーパーの明るい照明の下で売られている、
大手ブランドの酒だけが、日本酒ではないことも、
知っていただきたいなあ。

長野県は全国的にも、酒蔵の多い県。
皆さんがんばって、いい酒を作っている。
そのいい酒が、流通ルートの関係などで、
なかなか、普通の人の手に入りにくいのが難しいところ。

かんだたでも、地元長野の特別純米や純米吟醸酒を置かせていただいている。
日本酒なんぞと、最初から敬遠せずに、
ぜひ、蕎麦と一緒に味わっていただきたいものだ。

ところで、
最初の明治生まれの俳人、野村喜舟の句には、
気に入らないところがある。

酒のあとの蕎麦?
とんでもない!
そんな人は、酒も出さないし、蕎麦を食べさせないぞ。

えっ?
蕎麦の前の酒。
そりゃあいいねえ。
何杯でも酒も蕎麦もどうぞ。

Houka

 

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2010年10月25日 (月)

秋の夜長に燗酒を。

ここのところ、朝夕がぐっと涼しく、
いや、肌寒く感じられるようになって、
長野の町を取り囲む山々も、
秋の衣に着替える用意を整えているように見える。

さて、こんな季節に、
つい、飲みたくなるのが、
日本酒。
いよいよ、新酒の出回る季節で、
深みのある、香りとコクを楽しめるのだ。

深まっていく秋の気配の中で、
つい、ぬくもりを感じたくなってしまう。
ということで、そばの前に「燗酒」を頼まれる方が、
増える季節でもある。

 

Kanzake

 

「かんだた」でご用意している燗酒は、
地元の長野市の「信濃光」の特別純米酒。

精米歩合の高い、特別純米酒なんて聞くと、
たいていは、
ギンギンに冷やして飲むもの、、、、
と思われがちだが、
じつは、暖めてもおいしいものがある。

この酒もまさにそうで、
酒を飲み慣れたお客様からも、
「おいしい酒だ。」と言われたりして、
この酒を選んだ私は、ほっとしているところだ。

燗酒にする銘柄を選ぶにあたって、
ずいぶんと、苦悩したところがある。
ある程度、名の売れた、評価の安定した銘柄を入れれば、
何の苦労もないのだが、
私は、あくまでも、地元の長野の酒を使いたかった。
長野県は、新潟県に次いで、
酒蔵の多いところ。
酒造りは盛んなのだが、
全国的な評価や、知名度が今ひとつ足りない。
地元の酒好きな人も、
県外の酒を取り寄せては、
うんぬんと言っている有り様。

地元長野の酒で、
アルコール添加のない純米酒以上の酒で、
燗をして飲めるような酒はないだろうか。

ということで、
試飲会や、銘柄を揃えている店に行っては、
たいして飲めない酒を、味見していた。
そうして、その中から6本を取り寄せて、
比べてみたのだ。

酒の味見は常温に限る。
そう思っていた私は、
その六つの銘柄を飲み比べ、
選ぶことにした。

私が酒を選ぶ基準は三つある。

第一にそば屋の酒だ。
極端に香りの強いもの、
味が口に残るタイプの酒はだめだ。
料理との相性のいい酒、そして、
あくまでも、そばをおいしくする酒でなければ。

第二に
飲み飽きない酒。
一口飲んで、おいしいと感じる酒もあるが、
そういう酒は、飽きやすい。
杯が進んでも、いつまでも、
同じようにおいしく飲めること。

第三に、
安定して供給されること。
けっこう酒蔵では、
季節限定や、数量限定で、
試験的な酒を出荷することがある。
また、以前居酒屋をやっていた時に、
小さな蔵の酒で、季節によって変わる酒の質に、
振り回されたことがある。
その蔵の、グランドブランドであり、
いつも変わらぬ品質で出荷される酒でなければね。

とうことで、酒に弱い私が味見をし、
だいたい一つの酒に決まりかけた。
その時は正直言って、
この「信濃光」は選外だったのだ。

さて、もう面倒だし、
その銘柄に決めようかと思った時、
「そうか、この酒は、燗をして飲む酒だ。」
と思って、
念のため燗をして飲んでみた。
そうしたら、
その銘柄の酒、何となく物足りないのだ。
なにか、行列ができているときのそば屋の店員のような、
つんけんとした雰囲気が感ぜられる(汗!)。

ということで、
燗をして利き直してみたら、
うううう、、、何だ、この香りは、、、
と、
引っかかる酒がある。

それが「信濃光」の特別純米酒だった。

後で調べてみたら、
この酒は「花酵母」という特別な酵母を使って作ったらしい。
それが、暖めた時に、
他の酒にない温かな香りとなるのだろうか。

正直言って、
この酒を使うことには躊躇があった。
悪くいえば田舎臭い酒だ。
味の面でも、何となく危うさの感じられる。
決して安い酒ではない。
果たして、この酒で、お客様は喜んでいただけるだろうか。
そうして、
私の、酒を選ぶ目は、いや口は、
確かなのだろうか。
もっと、
評価の定まった銘柄を使った方が、
良かったのではないだろうか。

でも、
この酒を飲まれたお客様から、
蔵のことを聞かれたり、
「そばはともかく酒はうまい。」
などと、冗談を言われたり、
おおかたは喜んでいただいた。

そうして、
前にも書いたように、
この酒を、数ある長野の酒の中から選んだ私は、
「ほっ」としたのだ。

酒に弱い私の選択は、
間違っていなかったかなあ、、、と。

秋の夜長を、
じっくりと、ゆっくりと燗酒で過ごすのもいかが。

あっ、そばも忘れないでね。

 

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