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2009年11月17日 (火)

食べ姿の美しいお客様

だいぶ前のことだけれど、
地元のタウン誌の取材を受けたときのこと。
いろいろと、店の基本情報を説明した後で、
若さの中に、落ち着きを持ち始めた年頃の女性の記者が、
こんなことを聞く。

「あのう、この店は、どんなお客さんに来てほしいですか?」

これは、いつも自分でも考えていること。
直ぐにこう返事をした。

「はい、食べる姿の美しいお客様に来ていただきたいのです。」

それを聞いたときの、記者の顔は、
真夜中の墓場でゾンビを目撃したかの表情。
しばらく、言葉に詰まっていた。

おそらく、
「サラリーマンの人に」とか、
「若い女性に」とか、「家族連れに」とかいう、
そんな返事を待っていたのだろう。

「あの、それって、お金持ちのお客さんに、
 来てもらいたいっていうことですか?」
やっと出た続きの質問。

「とんでもない、そんなことは関係ないですよ。
 そばを美しく食べていただきたいのです。」

はあ、と、なんだか、
解ったような、解らないようなご返事。
後で作られた記事には、この言葉は載らなかったから、
きっとうまく伝わらなかったのだろうなあ。

「食べ姿の美しいお客様が店のお客様」

これは、ある、一流の寿司屋さんのご主人の言葉。
たまたま、以前に雑誌で目にして、
ずっと、私の心に焼き付いている言葉なのだ。

一生懸命作ったものを、
おいしく、大切に食べていただけるお客様。
それが、一番大切なお客様なのだ。

高いものを食べるから、
いつもたくさん使ってくれるから、
ではなく、
美しく食べてくれるから、
その店のお客になれる。
そんな関係を築ける店になりたい、、、
と、その寿司屋のご主人はおっしゃっていた。
(もちろん、私の行けるような店ではないけれど。)

私も、場末のそば屋ながら、そんな店をめざしたいなあ。

などというと、
お前は、お客を選ぶつもりか、、、、
と怒られそう。

いえいえ、これはねえ、
私の戒めの言葉でもある。
スタッフにも、伝えたいことでもある。

「食べ姿の美しいお客様」
きっと、そういう方は、
ご自分のライフスタイルにこだわり、
細かいところまで、気を使う方なのだ。
その方なりの美学をお持ちの方。
まあ、このくらいでいいや、、、
などということが嫌いな方。

そうして、自分の時間を大切にし、
命を支える食べ物にこだわりを持ち、
お気に入りの仲間や雰囲気を大事にされる。

そういう方に来ていただくには、
迎え入れる店が、しっかりとしていなければならないのだ。

きちんとした「そば」を作ることはもちろん、
気持ちよく食べれるように、
いい時間が過ごせるように、
細かいところまで、行き届くような店にしなくてはいけない。

「食べ姿の美しいお客様」に来ていただくには、
まず、
「仕事姿の美しい店」にしなくては。

幸いなことに、こんな路地裏にありながら、
私は、いいお客様に恵まれている。
でも、忙しさや、
優しいお客様のご好意に甘えて、
少し、行き届かなくなっているところが、
多くなっていないだろうか。
そんなことが、やや気になるこのごろ。

ところで、そばを「美しく」食べるって、
どういうことだろう、、、、。

なんて話を、また考えてみよう。


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コメント

身を正して読みました。
「食べる姿の美しいお客様に来ていただきたい」というのは、志しの高さが表れた言葉ですね。
ああ、いいなあと思うと同時に、あれっ? 自分はどんな食べ方をしていただろうか、と振り返ってしまいました。うまい蕎麦を前にして、人目も気にせず喰らいついていたのではないかと。
食べる姿の美しい客になるには、私の場合まだまだのようであります。

投稿: 所沢太郎 | 2009年11月19日 (木) 19時13分

所沢太郎 さん、こんにちは。
身を正して読んでいただき、ありがとうございます。いえ、恐縮です。
「食べ姿の美しい」というのは、別に、行儀がいいとか、作法がどうのこうのとかではなく、気持ちよくそばを食べていただいていることです。
店に入ったお客様が、自然とそのように召し上がれるような、雰囲気や気分を作りたいものです。
私のほうこそ、まだまだ、そこまでいきません。

投稿: かんだた | 2009年11月20日 (金) 06時00分

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