セイジョウキよ、永遠に!
アメリカが狙われた、あの同時テロ。
ワールドトレードセンタービルの崩壊や、
ペンタゴンが被害を被った。
以後、アメリカは、
一気にナショナリズムが高まり、
至る所に、アメリカ国旗が掲げられるようになった。
アメリカ国旗、つまり星条旗は売り切れとなり、
日本にある国旗メーカーが、
大忙しになったという。
さて、
その頃私は、長野市の郊外で、
小さな「純米酒と手打ちそばの店」をやっていた。
まだ、今の場所に移り、
「かんだた」を立ち上げる前のことだ。
ある日、常連のお客さまがいう。
「マスター、セイジョウキを買ってくれよ。
会社からの割り当てで、売らないといけないんだ。」
「ええっ、星条旗?
うちの店には合わないよ。」
と、私は答える。
「そんなことはないよ。
この店に、ちょうど合うぐらいのセイジョウキがあるんだ。」
さすが、営業をしているお客さま、
ちょっとのことではへこたれない。
「って、どのくらいの大きさなの?」
「そうだな、高さが50センチぐらい。
幅は、せいぜい30センチぐらいかなあ。」
「ああ、小さなものだねえ。
そのくらいならいいかもしれない。
で、いくらぐらいするの?
えっ、そんなにするの!
たかが小さな星条旗に?」
お客さまは悪びれずにいう。
「そう、マイナスイオンが出て、
殺菌作用があるしね。」
ええっ、国旗が殺菌作用を持っているって???
などというやり取りの末に、
結局買ってしまった空気清浄器。
前の店でも、
「この店に合わない機械だなあ。」
と言われ、
今でも、
「このストーブ、全然暖かくないよ。」
と、吹き出し口に手をかざすお客さま。
はたして、この清浄機、
役に立っているのかどうか、
分かったものではない。
でも、「五年で換えること」というフィルターを、
やっと、交換した。
店の匂いというものは、
意外と、中にいるものには分からない。
この店を始めた頃には、
土蔵独特の、ジメッとした匂いが気になったが、
今では、慣れてしまって、
感じなくなっているだけかもしれない。
せっかくのそば屋。
ほかの匂いで、
皆様のお食べになる邪魔をしたくない。
できれば、こういう機械を使いたくないけれど、
窓の無い蔵の中、
きちんと働いていることを願っている。
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