« 見た目はおしゃれだけれど。 | トップページ | 私は酒が苦手、酒は光が苦手。 »

2007年10月 7日 (日)

時間の力

フランスはボルドーと言えばワインの産地。
その中でも、サンテミリオンといえば、
ワイン好きの方なら、思わずよだれが出てしまう、
銘酒の生産地。
小高い丘の上にある、中世風の町をぐるりと囲んで、
たくさんの醸造所があり、味を競っている。

友人の案内で、そのうちの一つの醸造所を訪ねた。
もう、二十年近く前のことだ。

オーナー自らの案内で、ワインの眠る蔵に案内してもらった。
建物は古いれんが造りだが、ワイン樽の置かれている蔵は、
きっちりと空調が利かされていて、ひんやりする。
一年前に仕込まれた、ワインが詰められた樽が、
壁に飾られたマリア像によって、しっかりと見守られている。

樽からすくったワインを、「試し」だよ、
と言ってグラスに注いでくれる。
大きめのグラスに、ワインをたっぷりと注ぎ、
グラスを持ち上げて、色を見る。
ぐるぐると回して、アルコールの粘りを見る。
鼻を近付けて匂いを嗅ぐ。
そして味を見る。

「これはまだ、味あう段階のワインではない。」
オーナーはそういって、足下のバケツに、
残ったワインを捨ててしまう。
ええ、捨てちゃうの。
口の中で、シュワシュワしていて、
美味しいのに。
と、ごくごく飲んでしまった私。

約一年、樽の中で育ったワインは、
今度は瓶に詰められ、
薄暗い蔵の中に寝かされて、
静かに熟成の時を待つ。
広大な蔵の中で、
膨大な、もの言わぬワインの瓶に囲まれた時、
人の力では、どうしようも出来ない、
時の力を感じる。
この、時の流れの中で、
人間は、無力に等しいのだ。

そして、人間の出番である、
熟成の時を、ひたすら待つより他はない。

同じ醸造酒である日本酒も同じ。
冬に仕込まれた酒は、
じっと、蔵の中で、熟成の時を待っている。
造りの季節でない時に、
酒蔵を見学にいくと、
蔵には動きはなく、
ただ、ある種の、緊張した時間が流れている。

ステンレスや、ほうろうの桶に入れられた酒が、
まさに熟成の時を待っているのだ。
日本の酒蔵も、フランスのワインの醸造所も、
同じような、時の力を宿しているのだ。

幸いなことに、日本酒の場合は、
ワインより短い時間で、熟成の時がやってくる。
さあ、これからの季節。
そうやって、時間が、
人間にバトンタッチしてくれる季節なのだ。

秋の新酒を、
心して、味わおう、楽しもう。

あ〜あ、嫌だね飲ん兵衛は。
ああのこうの、理屈を並べて。
だから、私は酒が苦手なのだ。


→→→人気blogランキングへ

|

« 見た目はおしゃれだけれど。 | トップページ | 私は酒が苦手、酒は光が苦手。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 見た目はおしゃれだけれど。 | トップページ | 私は酒が苦手、酒は光が苦手。 »